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ファルコン9Falcon 9

Falcon9とは

Falcon9(ファルコンナイン)は、アメリカの宇宙開発企業SpaceX(スペースエックス)が開発・運用中の2段式の大型液体ロケットです。特筆すべきは、第1段を恒常的に回収、再利用できるロケットであることです。低軌道(LEO)に22トン、静止遷移軌道(GTO)に8.3トンのペイロード輸送能力を有しており、日本の基幹ロケットであるH3ロケット以上のペイロード輸送能力があります。

ロケット直径は約3.7mと日本のH3ロケットと比較すると細身なのですが、フェアリング直径は5.2mあり、H3と同規模の大型の衛星を搭載する事が可能です。さらに複数衛星搭載機構も開発されており、140個以上の小型衛星を同時に打上げる事も可能です。

SpaceXのロケット開発は、地上試験・飛行試験を高頻度に繰り返しつつ、失敗から得られたデータを元に短いサイクルで改良を進めることで有名です。Falcon9も短期間に高頻度の試験を繰り返し、開発・改良が進められました。こうした積み重ねが、打上げ業界においてFalcon9が確固たる地位を築いた要因と考えられます。 

Falcon9は最初のバージョンであるv1.0から始まり、V1.1、Full Thrust(フルトラスト)とバージョンアップが進められ、2018年からは現在も運用が続けられているblock5(Full Thrust block5)へ移行しています。同機は現在、最も頻繁に打上げられるロケットであり、2025年には165回の打上げが実施されました。

Falcon9はその打上げ能力・再使用性・信頼性を活かして、低軌道通信衛星ネットワークStar link(スターリンク)を毎週の様に打上げるほか、有人宇宙船Dragon(ドラゴン)の打上げにも使用されています。同機は2020年代の宇宙開発業界において、欠かせない役割を果たしているロケットと言えるでしょう。

イーロン・マスク

Falcon9を開発したSpaceX社は、2002年にイーロン・マスク氏(Elon Musk)によってアメリカで起業されました。マスク氏は、1999年にオンライン金融企業を共同で創業し、2002年に売却。数百億円の資金を得た後、SpaceXを起業しました。

マスク氏は他に、電気自動車メーカーTesla(テスラ)の共同創業者でもあり、同社を世界有数の自動車メーカーに成長させることにも成功。近年ではTwitter(現在のサービス名はX)も買収し、様々な分野に絶大な影響力を発揮し続けています。

マーリンエンジンと再使用化

通常ロケットは使い切りで、使用後は大気圏で燃やす、或いは海没させて廃棄して使い捨てるのが一般的でした。しかしFalcon9はそれらの常識を破り、第1段を回収・再利用することにより打上げの低コスト化と高頻度運用を実現しています。

Falcon9には、ケロシンと液体酸素を推進剤とするMerlin(マーリン)エンジンが第1段に9機、第2段に1機搭載されています。第1段は第1回燃焼が終了・分離後、Merlinエンジンを再点火させて機体を減速させつつ、グリッドフィンや姿勢制御スラスターで機体の向きを整えつつ降下します。その後、着陸脚を展開し無人船上、或いは地上へ直立状態での垂直着陸を行います。

数多くのテスト・試行錯誤の結果を2015年12月22日、20回目の打上げに使用されたFalcon9第1段ロケットは地上パッドへの垂直着陸に成功。これは人工衛星打上げ用ロケットが宇宙空間への打上げミッションを実施後、垂直着陸に成功した初の事例でした。その後、さらに幾度かの回収・試験を経て2017年3月、回収した第1段ロケットの打上げにも成功しました。

2026年現在、Falcon9の全能力を使用する打上げではない限り、日常的に第1段ロケットは回収・再使用されています。また衛星等を格納するフェアリングの回収・再使用にも成功しており、Falcon9の低コスト化に寄与しています。

但し、再使用することが必ずしも低コスト化に直結する訳ではありません。世界初の再使用型宇宙船「スペースシャトル」は、再使用をすることで低コスト運用を見込んでいました。しかし打上げる度にかかるメンテナンス費用等がかさみ、結局スペースシャトルは2011年に退役しました。Falcon9のコスト競争力は、再使用化することのみならず様々な手段で実現していると考えられます。

なお、第1段回収には推進剤を消費する為、第1段を使い捨てる場合と比較するとペイロード輸送能力は数十%低下します。現在のところ、回収・再使用するのは第1段ロケットとフェアリングのみで、第2段は使い捨てとなります。

Falcon Heavy

Falcon9シリーズには、さらに大きなペイロード輸送能力を持つFalcon Heavy(ファルコンヘヴィ)と呼ばれる形態があります。これは通常のFalcon9第1段ロケットの横に2本、Merlinエンジンを9機搭載したサイドブースターを追加した形態です。その打上げ能力は低軌道に約63トン、静止遷移軌道に約27トンにもなります。

この機体はより大きなペイロードを打上げる為に使用されます。Falcon9より飛行回数は少ないものの、アメリカ宇宙軍のミッションに使用されることも多く、Falcon9シリーズには欠かせない存在です。

UPDATE:2026年4月5日

ファルコン9ロケットの性能、及び類似ロケットとの比較

機体名 ファルコン9H-2AH3
開発国
[運用主体]
アメリカ合衆国
[スペースX]
日本
[JAXA・三菱重工]
日本
[JAXA]
運用状況
[運用期間]
運用中
[2010年~]
退役済
[2001年~2025年]
運用中
[2023年~]
燃料ケロシン液体水素液体水素
直径/重量3.7m/549トン4m/445トン5.2m/422~574トン
打ち上げ費用
[推定値]
6975万ドル80~120億円50億円~
成功率99%
[374回/377回]
98%
[49回/50回]
71%
[5回/7回]
打ち上げ能力
[低軌道]
22トン10~15トン
[高度300km]
-
打ち上げ能力
[太陽同期軌道]
-3.6~4.4トン
[高度800km]
4トン以上
[高度500km]
打ち上げ能力
[静止遷移軌道]
8.3トン4~6トン6.5トン以上
備考2024年10月時点のデータ
スペックにファルコンヘビーのデータは含まれていません。
H-2A204型含む 2026年3月28日時点

主な参考ページ

日本のロケット

日本のスペースプレーン

世界のロケット

ロケットの基礎知識講座