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通信衛星まとめ その2Communication Satellite part2

観測衛星向けの通信衛星

観測衛星向けの通信衛星とは、観測衛星が集めた大容量データを素早く地上へ下ろすための「データ中継衛星」です。つまり人がインターネットなどを使うための通信衛星ではなく、観測衛星の能力を最大限活用するための通信衛星です。

従来のデータ中継衛星では電波が主体でしたが、光通信に対応した「光データ中継衛星」の整備構想が増加しています。これは観測衛星が取得したデータを光通信で受け取り、地上局へ光、或いは電波で高速伝送するタイプの衛星です。

光通信は秘匿性や耐干渉性が高く、周波数調整を必要としないという利点があります。地上局への伝送には光通信の方が高速ですが、光通信は雲や雨で阻害されやすいため、バックアップ手段として電波通信も必要とされています。

このページでは日本の民間企業であるSpace Compassの静止軌道の光データリレー衛星、NEC・アクセルスペースが開発しているK Program向けの光通信衛星について解説します。

GEO光データリレー衛星1号機

GEO光データリレー衛星1号機(以下、SC-A)は、日本のSpace Compass(スペースコンパス)が主導して整備を進めているGEO(静止軌道)上に配備される予定の光データリレー衛星です。Space CompassはNTTとスカパーJSATが折半出資して設立した合弁会社で、宇宙統合コンピューティング・ネットワークの構築を目標としています。

その中核となる衛星がSC-Aで、観測衛星などが宇宙で集めたデータを光通信で受け取り、それを地上局へ光、もしくは電波で高速伝送することを目的としています。この衛星の製造はスイスのSWISSto12が担当し、衛星プラットフォームには同社の1トンクラスの静止衛星プラットフォームであるHummingSat(ハミングサット)が使用されます。

なおSpace Compassは宇宙戦略基金の「衛星光通信を活用したデータ中継サービスの実現に向けた研究開発・実証」に採択されており、上限235億円の支援が決定しています。SC-Aの開発・製造は、この基金の支援を受けて整備が進められると思われます。

加えて、同社は防衛省の「静止軌道間光通信技術実証」も受注しています。これは静止軌道上に配備予定のSDA衛星が取得した情報の高速伝送を試みる実証です。この実証にもSC-Aが活用されるものと推測されます。

光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証

もう1つ、日本のデータ中継衛星開発において重要な役割を果たしているのが、経済安全保障重要技術育成プログラム(通称:K Program)の「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」です。事業期間は2022年度から2031年度、事業規模は600億円と大規模な実証計画で、複数の光通信衛星を打上げて、衛星光通信ネットワーク技術の開発と実証が計画されています。

この事業では、主に小型と中型の光通信衛星と光・RF地上局から構成されるコンステレーション構築が想定されています。Space Compassが代表を務めていますが、光地上局はNICT、小型衛星はアクセルスペース、中型衛星はNECが主体となって開発が進められています。

小型光通信衛星

アクセルスペースはこの事業において、主に小型光通信衛星の開発を担当しています。この機体は、地球観測衛星が取得したデータを光通信で受け取り、コンステレーション内で中継、或いは地上局へ転送する役割を担います。衛星質量は資料によって異なりますが、大体200~400kgが想定されているようです。

同社の担当範囲は小型光通信衛星開発以外にも、RF地上局、ネットワーク統合制御システム、さらに実証用の光通信ターミナル搭載地球観測衛星まで及びます。なお推進システムはPale Blueに再委託されており、何らかの水推進系が搭載される可能性が高いと考えられます。

システム設計においては、コストや開発スピードが重視されており、量産時の製造単価は1機約5億円が目標とされいます。現在のスケジュールでは、2027年度に2機の小型光通信衛星を打上げる予定となっています。

中型光通信衛星

NECはこの事業の中で、主に中型光通信衛星の開発を担当しています。中型衛星はデータ転送のみならず、宇宙コンピューティング機能(受信データの保存・軌道上処理)や静止軌道のデータ中継衛星との連接機能も求められています。衛星質量は資料によって異なりますが、大体300~750kgが想定されているようです。

高い能力が求められていますが、量産時の製造単価は1機50億円程度が目標とされています。現在のスケジュールでは、2029年度に1~2機の中型光通信衛星を打上げる予定となっています。

NEC光通信衛星技術実証衛星

NECは2026年3月19日に、光通信衛星技術実証機を2027年度に打上げると発表しました。衛星プラットフォームとして米APEXの小型のAries衛星バスを採用し、「民生用の光送受信機の耐放射線設計に関する実証」「宇宙での高速ネットワークルーティング処理技術に関する実証」「次世代ミリ波帯通信技術に関する実証」の3つの要素技術の実証を行います。

この衛星は前述したKプロの中型光通信衛星そのものではなく、それらの為の先行技術実証機と推測されます。またNECはJAXAの宇宙戦略基金「光通信衛星コンステレーション構築及びシステム実証に係る技術開発」にも採択されており、この技術実証の結果が活用されるとしています。

UPDATE:2026年4月8日

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