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Epsilonイプシロン

イプシロンロケットとは

イプシロンロケットは、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が主導し、IHIエアロスペースが設計・製造の中心を担って開発された日本の小型固体ロケットです。基幹ロケットの1つとして、主に日本の観測・科学ミッション用小型衛星の打上げに使用されることが想定されていますが、商業衛星を打上げることもあります。

同様にJAXAが運用中の基幹ロケットH3との大きな違いは、使用される推進剤の種類・大きさ・価格・打上げ能力などです。H3ロケットは主に液体燃料を使用する「大型液体燃料ロケット」ですが、イプシロンは固体燃料を使用する「小型固体燃料ロケット」です。日本は2種類のロケットを開発・運用することにより、液体・固体ロケット双方の技術を維持しています。

イプシロンには試験機型・強化型・S型など様々な形態が存在しています。2026年3月時点で6号機までの打上げが実施されており、これまでの打上げは全て、鹿児島県にある内之浦宇宙空間観測所から打上げられています。

イプシロンの特徴と試験機

イプシロンの特徴は、低コストで運用できる事にあります。以前運用されていたM-V(ミューファイブ)固体ロケットは、イプシロンより高い打上げ能力を有していたものの、非常に高コストで使いづらい点があるロケットでした。そこでイプシロンは打上げ1回あたり30億円、「世界一コンパクトな打上げ」を目標に開発が進められました。

第1段モータにはH-IIAロケットの固体ロケットブースタ「SRB-A」、第2段モータはミューファイブの第3段改良型である「M-34c」、第3段モータにはミューファイブの第4段改良型の「KM-V2b」を採用する事により、短期間・低コストでのロケット開発が進められました。さらにロケット本体のみならず、発射管制に必要な機器を小型化・低コスト化、さらに発射管制は従来80人体制だったものを最小8人まで減らす事を目標としています。

これらの目標を掲げて開発されたイプシロンロケット試験機(1号機)は2013年9月14日に内之浦より打上げられ、搭載していた惑星分光観測衛星「ひさき」を予定の軌道に投入する事に成功しました。イプシロンロケット試験機型は1号機のみで、2~6号機は改良が図られたイプシロン強化型となっています。

イプシロン強化型

イプシロン2~6号機は試験機に対し様々な改良が加えられていますが、一番大きな変更点は2段モータを「M-34c」から「M-35」へ変更した事が挙げられます。より大型化したM-35を新規開発・採用することにより打上げ能力が増大しており、さらにフェアリング内の衛星包絡域の拡大、衛星分離機構の低衝撃化が図られています。

試験機に搭載されていたPBS(小型液体推進装置)はオプションとなり、搭載する場合は固体燃料モータだけでは難しい高い精度で軌道投入する事が可能です。また複数衛星搭載構造(ESMS)も開発されており、初めて適用されたイプシロン4号機では計7機の衛星を、イプシロン5号機で計9機の衛星を軌道投入することに成功しています。

しかし、イプシロン強化型は5号機まで完璧な打上げを見せていたものの、2022年10月に打上げられた6号機は飛翔中に異常が発生、指令破壊が実行され打上げは失敗しました。失敗原因は2段RCSのダイアフラム式タンクにおける、「ダイアフラムシール部からの漏洩」と特定されています。

イプシロン強化型の運用は6号機で終了し、現在は後継モデルである「イプシロンS」の開発が進められています。

イプシロンSの開発

イプシロンSは大型基幹ロケットH3の開発成果等を活用して、イプシロンのさらなる打上げ能力向上・コストの低減・信頼性を向上させた最新型イプシロンです。

主な変更点は3つあります。第1段モータを「SRB-A」からH-IIAの運用終了に伴いH3の固体ロケットブースタ「SRB-3」を改良したモータへ変更されており、第2段モータは「M-35」から大型化した「E-21」へ、3段モータも「KMーV2c」から大型化した「E-31」へ変更されています。

また多くの部品・技術・推進薬をH3と共通化する事で開発の効率化、低コスト化を図っています。打上げ能力は太陽同期軌道への600kg以上、低軌道(高度500km/軌道傾斜角31.1度)に1,400kg以上を目標に開発が進められていました。

地上燃焼試験の爆発事象とBlock1

イプシロンS実証機(7号機)は当初、2023年度打上げを目標に開発が進められていましたが2023年7月14日、能代ロケット実験場で新型第2段モータ(E-21)が地上燃焼試験中に爆発。人的被害はなかったものの、施設が大きく損壊しました。原因究明の結果、イグブースタ(点火装置)の溶融による異常燃焼が原因と特定されました。

事故原因の対策が図られた後の2024年11月26日、種子島で第2段モータ(E-21)の地上燃焼試験が再度実施されましたが、点火約50秒後に再度爆発。燃焼試験中の燃焼圧力の予定外の上昇・燃焼ガスのリークが確認されています。

これらの燃焼試験の結果を受けて、イプシロンSの開発方針が見直されることになりました。具体的には、2段モータ(E-21)をイプシロン強化型で実績のあるM-35系に戻し、イプシロンSロケットBlock1として開発を進めることが発表されています。これはイプシロンSロケットの運用空白期間の短縮を目的としており、打上げ能力は当初想定していたイプシロンSに劣後するものの、早期に打上げが可能とされています。

イプシロンSロケットBlock1は、2026年度打上げを目標に開発が進められています。

さらなる将来構想

IHIエアロスペースは、イプシロンSの高頻度打上げを計画しています。内之浦宇宙空間観測所の打上げは年間数機が限度な為、国内外の別射場での打上げも検討している模様です。また打上げ能力向上や上段ロケットのデブリ化防止を目的とした、上段ロケットの液体化も検討されており、今後の展開が期待されます。

UPDATE:2026年3月29日

イプシロンロケットの性能、及び類似ロケットの比較

機体名 イプシロンミューファイブH-2A
開発国
[運用主体]
日本
[JAXA・IA]
日本
[JAXA]
日本
[JAXA・三菱重工]
運用状況
[運用期間]
運用中
[2013年~]
退役済
[1997年~2006年]
退役済
[2001年~2025年]
燃料固体燃料固体燃料液体水素
直径/重量2.6m/95トン2.5m/140トン4m/445トン
打ち上げ費用
[推定値]
30億円~75億円~80~120億円
成功率83%
[5回/6回]
85%
[6回/7回]
98%
[49回/50回]
打ち上げ能力
[低軌道]
1.2トン~
[高度250×500km]
1.85トン
[高度250km]
10~15トン
[高度300km]
打ち上げ能力
[太陽同期軌道]
0.59トン
[高度500km]
-3.6~4.4トン
[高度800km]
打ち上げ能力
[静止遷移軌道]
--4~6トン
備考上記は強化型のスペック H-2A204型含む

主な参考ページ

日本のロケット

日本のスペースプレーン

世界のロケット

ロケットの基礎知識講座