エレクトロンElectron
エレクトロンとは
エレクトロン(Electron)ロケットとは、宇宙ベンチャー企業Rocket Lab(ロケットラボ)が開発した小型ロケットです。アメリカとニュージーランドに拠点を持ち、エレクトロンの打上げもニュージーランド・マヒア半島や、アメリカ・バージニア州ワロップス島から実施されます。
エレクトロンは全長約18m・直径1.2m・総重量13トンの2段式小型液体ロケットです。使用する推進剤はケロシンと液体酸素、低軌道に最大300kgのペイロードを輸送することが可能です。基本的には第1段・第2段ロケット、そしてキックステージで構成されていますが、フェアリングは様々な形態があり、多種多様な衛星・探査機を軌道上に投入できます。
優れた小型液体ロケット
2026年3月現在、大型ロケットの分野ではSpaceX社のFalcon(ファルコン)9ロケットが圧倒的なシェアを誇っていますが、小型ロケット業界ではエレクトロンが最も頻繁に打上げられ、その存在感を示しています。
その低価格・使いやすさから日本企業の人工衛星を打上げることも多く、これまでにキヤノン電子・QPS研究所・Synspectiveの地球観測衛星、ALE社の人工流れ星衛星等、多くの打上げに使用されています。2017年に試験1号機を打上げて以降、2026年3月29日時点で85回の打上げが実施され、内81回成功しています。現時点で最も優れた小型ロケットであると言っても過言ではないでしょう。
ラザフォードエンジン
エレクトロンの注目ポイントは、そのメインエンジンである「ラザフォードエンジン」です。この重量わずか35kgのロケットエンジンは、燃焼室・インジェクター・ポンプ・推進剤バルブ等々、多くの主要部品が3Dプリンターで製造されており、迅速かつ大量生産する事に成功しています。エレクトロンはこのエンジンを第1段に9基、第2段に1基、それぞれ搭載しています。
さらに先進的なテクノロジーとして注目したいのは電動ポンプです。一般的なロケットエンジンでは、ターボポンプと呼ばれるガス駆動ポンプで推進剤を加圧して主燃焼室に送り込んでいます。ラザフォードエンジンではガス駆動のターボポンプではなく、電気駆動の電動ポンプを使用して燃焼室に推進剤を加圧して送り込みます。
電動ポンプには、ガス駆動のターボポンプと比較してバッテリーやインバータが必要になるものの、複雑なターボポンプが不要となり、全体的に簡素化出来る、推力制御も比較的容易であるなど様々なメリットがあります。この技術は世界で初めてラザフォードエンジンで実用化に成功しています。
HASTE
HASTE(Hypersonic accelerator suborbital test electron)は、Electronをベースに開発されたサブオービタル実験用ロケットです。基本構造はエレクトロンと共通ですが、人工衛星の打上げには使用されません。極超音速技術の試験向けにキックステージが改修されており、さらに特注フェアリングを使用することが出来ます。
HASTEは最大約700kgのペイロードを搭載でき、ペイロード分離時の速度は秒速3~7.5km以上とされています。HASTEはエアブリージングエンジン・HGV(滑空体)・再突入体などの試験に必要な極超音速の飛行環境を、低コストかつ高頻度で提供できる試験プラットフォームとして位置づけられています。
エレクトロンロケットの性能、及び類似ロケットとの比較
| 機体名 | エレクトロン | カイロス | ZERO |
|---|---|---|---|
| 開発国 [運用主体] | アメリカ・ニュージーランド [ロケット・ラボ] | 日本 [スペースワン] | 日本 [インターステラ・テクノロジーズ] |
| 運用状況 [運用期間] | 運用中 [2017年~] | 開発中 | 開発中 |
| 燃料 | ケロシン | 固体燃料 | 液化メタン |
| 直径/重量 | 1.2m/13トン | 1.35m/23トン | 2.3m/71トン |
| 打ち上げ費用 [推定値] | 750万ドル~ | 10億円(試験初号機) | 8億円 |
| 成功率 | 95% [81回/85回] | 0% [0回/3回] | -% [0回/0回] |
| 打ち上げ能力 [低軌道] |
0.26トン [高度550km] | 0.24トン [高度300km] | 0.80トン |
| 打ち上げ能力 [太陽同期軌道] |
0.2トン [高度500km] | 0.15トン [高度500km] | 0.25トン |
| 打ち上げ能力 [静止遷移軌道] | - | - | - |
| 備考 | 2026年3月29日時点 | 2026年3月29日時点 | 2024年3月31日時点 打ち上げ能力は将来最大能力 |
