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H3ロケットエイチスリー

H3ロケットとは

H3ロケットは、Hー2Aロケットの後継機として宇宙航空研究開発機構[JAXA]と三菱重工が共同開発中の日本の次期基幹ロケットです。近年、再使用型ロケットの登場などによりロケット打ち上げ市場は競争が激化しており、特により低価格のロケットが求められていました。その為H3は、Hー2Aより低価格であることはもちろん、使いやすさ・信頼性・打ち上げ能力、全てに優れる次世代のロケットとして開発が進められました。

H3ロケットは主に3形態あり、それぞれ第一段ロケットに搭載しているメインエンジン数と、固体ロケットブースターの数が違います。
H3-30:LE-9エンジン×3基+固体ロケットブースターなし
H3-22:LE-9エンジン×2基+固体ロケットブースター×2基
H3-24:LE-9エンジン×2基+固体ロケットブースター×4基

打ち上げ能力・費用ともに H3-30<H3-22<H3-24 の順となっており、打ち上げる人工衛星等の重量に応じて使い分けられます。最も小型のH3-30は、Hー2Aロケットより大幅に安い1回50億円程度で打ち上げられる様、設計・開発がすすめられています。

H3は当初、2020年度打ち上げを目標に開発されていましたが、第一段ロケットのメインエンジンLE-9の開発が難航した為、幾度か延期が繰り返されましたが2023年3月7日、H3試験機は種子島宇宙センターから打ち上げられました。

メインエンジンLE-9

第1段ロケットには「LE-9」という液体水素・酸素を燃料としたエンジンを新規に開発しています。これはHー2A第2段ロケットに搭載している「LE-5B」と同じタイプの「エキスパンダーブリードサイクルエンジン」です。このエンジンはHー2A第1段ロケットに使われていた「二段燃焼サイクルエンジン」と比較すると、推進剤効率が落ちるというデメリットがあります。

しかしこの「エキスパンダーブリードサイクルエンジン」は想定外の動作時に爆発しにくいというメリットがあります。将来は有人ロケットとして活用される可能性があります。また構造を簡素化でき、信頼性向上とともに低コスト化できるというメリットもあります。それらのメリットがデメリットを上回ると判断されています。

初号機の失敗と二号機の成功

幾度かの延期を経てH3ロケット試験初号機は、2023年3月7日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。開発が難航していたLE-9エンジンは、順調に稼働し飛行を続けました。しかし、信頼性の高いと考えられていた第2段ステージの「LE-5B-3エンジン」の点火に失敗。ミッション続行不可能と判断され、指令破壊信号によりH3初号機は破壊されミッションは失敗しました。搭載していた先進光学衛星ALOS-3も喪失しました。JAXAは原因究明を行い、不具合の原因を3つまで絞り、それぞれに対策を施しました。

そして2024年1月10日、H3ロケット試験2号機が打ち上げられました。飛行中、LE-9・LE-5B-3は共に正常に機能。試験ペイロード1機、小型副衛星2機を予定通りの軌道に投入し、H3ロケットの開発に成功しました。

将来構想

日本はアメリカ合衆国が主導する国際協同月探査計画「アルテミス」に参加しています。日本はその中核施設である月軌道上の宇宙ステーションへの補給任務実施を目指しています。しかし月軌道まで次期宇宙ステーション補給機「HTV-X」をH3ロケット1機では打ち上げられません。

HTV-Xを分割してH3を2機で打ち上げて軌道上でドッキングさせる方法も検討されていますが、それとは別にH3の第一段ロケットを3本に増やした「H3ヘビー」の開発構想も存在します。

UPDATE:2024年4月24日

H3ロケットの性能、及び類似ロケットの比較

機体名 H3H-2Aファルコン9
開発国
[運用主体]
日本
[JAXA]
日本
[JAXA・三菱重工]
アメリカ合衆国
[スペースX]
運用状況
[運用期間]
運用中
[2023年~]
運用中
[2001年~]
運用中
[2010年~]
重量422トン~574トン445トン549トン
打ち上げ費用
[推定値]
50億円~80~120億円6700万ドル
成功率50%
[1回/2回]
97%
[47回/48回]
99%
[308回/310回]
打ち上げ能力
[低軌道]
-10~15トン
[高度300km]
16.8~22.トン
打ち上げ能力
[太陽同期軌道]
4トン以上
[高度500km]
3.6~4.4トン
[高度800km]
-
打ち上げ能力
[静止遷移軌道]
6.5トン以上4~6トン5.8~8.3トン

参考ページ

ロケットの基礎知識講座

日本のロケット

日本のスペースプレーン

世界のロケット