カイロスロケットKairos
カイロスロケットとは
カイロスは、日本の民間ロケットベンチャー企業『スペースワン』が開発中の衛星打ち上げ用の小型の固体燃料ロケットです。スペースワンはキヤノングループの一員である「キヤノン電子」が中核となり、他にもイプロシンロケットを開発したIHIエアロスペースや宇宙開発に積極的な清水建設他数社の出資により設立されました。
2023年1月現在、どのようなロケットモータを積むのか等非公開の情報が多いのですが、公表されている機体規模・打ち上げ能力は同じ固体ロケットであるイプシロンロケットと比較して1/4位のだいぶ小型のロケットとなりそうです。コンセプトは契約から打ち上げまでの短縮化、「世界最短・最高頻度」を掲げています。
カイロス初号機は幾度かの延期を経て、2023年夏頃に打ち上げられる予定です。
スペースポート紀伊
日本の衛星打ち上げロケットは、鹿児島県の種子島宇宙センター、あるいには内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられるものしかありませんでしたが、このロケットは本州・和歌山県の『スペースポート紀伊』から打ち上げられます。スペースポート紀伊はカイロスの為に新設されたロケット発射場です。
これまでロケット発射場は鹿児島県にしかなかった事を考えると、本州にできるこの「スペースポート紀伊」はより多くの日本人が宇宙開発を身近に感じる事がきっかけになるかもしれません。
キヤノン電子
スペースワンの親会社であるキヤノン電子は、キヤノンが株式の53%を保有している子会社です。有利子負債はほんどなく、実質無借金経営を続けながら毎年50億円前後の利益を計上している優良企業です。ロケット開発には多額の資金がかかる為、収益・財務基盤がしっかりした企業が親会社である事はカイロスにとって大きな強みとなっています。
また後述するキヤノン電子の地球観測衛星の打ち上げ需要を獲得できそうな事も大きな利点と言えるでしょう。
カイロスに搭載される衛星
初号機も含めてカイロスに搭載される衛星に関する情報はほとんど公開されていません。
しかしスペースワンを創設したキヤノン電子はすでに超小型地球観測衛星を開発・運用しています。同社の衛星はこれまで海外のロケットで打ち上げられていましたが、今後はカイロスが使用される可能性が高いです。同社はこれらの超小型地球観測衛星の量産を目指しています。最も新しい地球観測衛星「CE-SAT-IIB」は重量36kg程ですから、カイロスなら複数機を同時に打ち上げる事が可能です。
カイロスロケットの性能、及び類似ロケットとの比較
機体名 | カイロス | イプシロン | ミューファイブ |
---|---|---|---|
開発国 [運用主体] | 日本 [スペースワン] | 日本 [JAXA・IA] | 日本 [JAXA] |
運用状況 [運用期間] | 開発中 | 運用中 [2013年~] | 退役済 [1997年~2006年] |
重量 | 23トン | 95トン | 140トン |
打ち上げ費用 [推定値] | - | 30億円~ | 75億円~ |
成功率 | -% [0回/0回] | 83% [5回/6回] | 85% [6回/7回] |
打ち上げ能力 [低軌道] |
0.24トン [高度300km] | 1.2トン [高度250*500km] | 1.85トン [高度250km] |
打ち上げ能力 [太陽同期軌道] |
0.15トン [高度500km] | 0.6トン [高度500km] | - |
打ち上げ能力 [静止遷移軌道] | - | - | - |