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軌道上サービス機-その4[寿命延長衛星]Life Extension

寿命延長衛星とは

寿命延長衛星(LEX衛星)とは、人工衛星の寿命を延ばすことが出来る軌道上サービス機です。主に2つのタイプがあり、1つは対象衛星にドッキングして軌道保持・修正を行うタイプのLEX衛星。もう一つは対象衛星にドッキングして燃料補給を行うタイプのLEX衛星です。

例えば、地球赤道上空36,000km付近の静止軌道上ある人工衛星、これを静止衛星と言いますが、この軌道を維持するためには少なからず燃料を消費します。燃料が枯渇するとサービスを継続できず、新しい静止衛星を軌道に投入する必要がありますが、これには数百億円という多大な費用がかかります。しかし、LEX衛星があればドッキングして軌道を維持し続けたり、燃料を補給する事により静止衛星の寿命を比較的低コストで延ばすことができます。

また静止衛星は基本的に特定地域の上空に留まり続けますが、なんらかの事情により別地域へ移動する必要がある場合があります。例えばアジア上空にある静止衛星をヨーロッパ上空へ移動させるケースなどです。衛星単独では燃料消費の関係から実行が難しいことがありますが、LEX衛星があれば静止衛星にドッキングして移動させる、あるいは燃料を補給して自力で移動してもらう等の対処が可能です。

さらに静止軌道は大変重要な軌道な為、静止衛星はサービス終了後、墓場軌道と呼ばれる静止軌道から約300km程の上空の軌道に移動させて、他の静止衛星の邪魔にならないようにする必要があります。しかし軌道移行に失敗する衛星が多く問題になっています。これに対しても、LEXがドッキングして墓場軌道まで移行させたり、燃料補給することでこの問題に対処できます。

次項から、日本企業が開発を進めているLEX衛星を紹介していきます。

APS-R

APS-R(Astroscale Prototype Servicer for Refueling)は、アストロスケールが開発中の燃料補給衛星です。300kgほどの小型LEX衛星で、静止軌道上の米軍の衛星2機に燃料のヒドラジンを補給することや、オービットファブの燃料補給ステーションからの受油が計画されています。

同機は米国宇宙軍の軌道上燃料補給実証事業向けに、その開発・製造を約60億円でアストロスケールが受注しています。開発・製造はアストロスケール米国拠点主体で進められており、衛星プラットフォームは米サウスウェスト研究所が開発・製造を担当し、燃料補給インターフェースには米Orbit Fab(オービットファブ)のRAFTIを採用しています。APS-Rは、2026年頃の打ち上げが予定されています。

LEXI-P(レクシー・ピー)

LEXI-Pは、アストロスケールが開発中の軌道保持型寿命延長衛星です。対象静止衛星とドッキングして10~15年程度、軌道保持・修正サービスを提供します。また前述のAPS-Rによる燃料補給を受ける可能性があります。

開発・製造はアストロスケール米国拠点主体で進められていますが、2025年5月末時点で販売・サービス契約を締結しておらず、打ち上げ時期も未定です。

K-Program衛星(仮称)

K-Program衛星(仮称)は、アストロスケールが開発中の燃料補給衛星です。低軌道上の人工衛星への燃料補給が計画されており、衛星給油口接続システムの開発には本田技研研究所も参画しています。衛星プラットフォーム(衛星基本機能モジュール)は、前述したISSA-J1と同一で、開発期間の短縮や開発リスクの低減が期待できます。

同機の開発には、内閣府のK-Program(経済安全保障重要技術育成プログラム)により最大120億円の補助金交付が決定しており、アストロスケール日本拠点で開発・製造が進められています。順調に進めば、打ち上げは2028年頃の予定です。

UPDATE:2025年6月19日

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